『月に届かなかったうさぎ』

ぴょんっ。ぴょん、ぴょん、ぴょ〜ん。
「だめだなぁ。どんなにいきおいをつけてがんばっても、あんなに高くは飛べないや・・・。」
30日に1度だけ会えるまんまるいお月様のところに行きたくて、うさぎくんは一生懸命跳ねています。
でも、何度跳んでも、届かないのです。
そんなうさぎくんをずっと見ていたかえるさんが、うさぎくんに話しかけました。
「ねぇうさぎくん。どうしてそんなにお月様のところに行きたいの?」
「あのお月様には僕と同じうさぎがたっくさん住んでいるんだ。だから、みんなに会いに行きたいんだ。だけどあんなに高く跳べなくて・・・。」
かえるさんは少し考えて言いました。
「私がう〜んと高く跳べる方法を教えてあげる。そうしたら今度はきっとお月様のところに行けるわ。」
「ありがとう、かえるさん!」
とても嬉しそうに笑っているうさぎくんを見て、かえるさんも嬉しくなりました。

あれから30日。また、お月様がまんまるになる日がきました。
うさぎくんがお月様に届くように高〜く跳ぶのを応援しようと、かえるさんやりすくん、やまあらしくんやきつねさん、ことりさんも。森の仲間達がたくさん来てくれていました。

ぴょんっ。ぴょん、ぴょん、ぴょ〜ん。
うさぎくんはとても高く跳べるようになっていました。
あともう少し、もう少しでお月様に届くぞ。
みんながそう思っていたとき。うさぎくんは跳ぶのをやめてしまいました。
見守っていた森の仲間達はびっくりして、口々に「どうしてなの?」「どうしてやめちゃったの?」と言っています。
そんな森の仲間達に、うさぎくんは言いました。
「僕はかえるさんが跳び方を教えてくれたから、こんなに高く跳べるようになったんだ。今日はこんなにいっぱい、みんなが応援しに来てくれた。お月様にいるうさぎの仲間に会いに行かなくても、ここに、こんなにいっぱいお友達がいる。だからもうお月様に行きたいなんて思わない。かえるさん、それにみんなも、せっかく応援してくれたのにごめんなさい。ずっとここで、みんなと一緒にいても、いいかな。。。」
うさぎくんの言葉を聞いて、みんなはすぐに笑顔で言いました。
「あたり前じゃないか!だって、僕たちはみんな同じ森の仲間なんだから!」
「ありがとう。僕、とっても嬉しいよ。」
うさぎくんも笑顔になりました。

それから。その夜はみんなで、まんまるのお月様を眺めていました。
大好きな森の仲間達と一緒に。。。



ものがたり
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